組み込みシステムのセキュリティ、どう守る?MITRE EMB3D入門 — 初学者でもわかる脅威モデリングの第一歩
- 5月15日
- 読了時間: 4分
Hi, there.
今回のトピックは脅威モデリングです。
はじめに
「スマート家電や産業用ロボット、どうやってセキュリティを守ればいいの?」 そんな疑問を持ったことはありませんか?
ITシステムのセキュリティ対策(MITRE ATT&CKなど)は有名ですが、実は「組み込みシステム(Embedded Systems)」には、ハードウェア特有の守り方があります。
そこで登場したのが、2024年に公開された新しいフレームワーク『MITRE EMB3D』です。この記事では、初学者の方向けに、この便利なツールの使い方をわかりやすく解説します。
MITRE EMB3Dとは?
簡単に言うと、「組み込みデバイスに特化した、攻撃者の狙い目と対策のリスト」です。
セキュリティエンジニアが攻撃者によるサイバー攻撃を想像する際、いわゆる脅威モデリングを実施するというのセオリーですが、STRIDEやアタックツリーなどの様々な分析手法が存在しどれを使えばいいのか選択に悩まされていました。
そんな中、単一の基板で完結するようなシステムにおける脅威モデリングの救世主となりうるツールとしてMITRE EMB3Dが登場しました。
EMB3Dは、過去の攻撃事例をベースに、デバイスの「脆弱性」と「守り方」を整理してくれており、尚且つブラウザ上でガイドに従いチェックをしていくだけで簡単に分析を行うことができます。
公式サイト: MITRE EMB3D
特徴: ソフトウェアだけでなく、ハードウェアやネットワークインターフェースに潜む脅威もカバーしています。
なぜ「EMB3D」が必要なの?
通常のITシステムやSaaSなどと違い、組み込みデバイスには以下のような特徴があるからです。
物理的な露出: 誰でもデバイスに触れ、分解できる可能性がある。
リソースの制限: 強力なウイルス対策ソフトを動かすパワーがない。
長期間の運用: 10年以上アップデートなしで動くこともある。
これらを考慮した「組み込み専用の脅威分析ガイド」がEMB3Dなのです。
ステップ別:EMB3Dの使いかた
初めて使うときは、以下の3ステップで進めるのがおすすめです。
Step 1: デバイスの機能を整理する
まずは、自分が守りたいデバイスがどんな「機能」「データ」を持っているか書き出しましょう。
Wi-Fiはある?
USBポートは付いている?
デバッグ用の端子(UART/JTAG)は露出している?
個人情報や秘密鍵を保持している?
Step 2: EMB3Dのカタログを見る
EMB3DのProperties Mapperを開きます。そして、step1で整理した情報をもとに「Hardware」「System Software」「Application Software」「Networking」の上位カテゴリから、自分のデバイスに該当するチェック項目をチェックしていきます。上位のカテゴリーをチェックすると、さらに下位のカテゴリーが表示されますので、そちらにもチェックをつけていきます。そうすると、デバイスの性質(PID)に基づいた脅威(TID)を勝手に導出してくれます。これだけです。
ラズパイ zero 2 Wを例にとった結果を一部抜粋して載せておきます。

ちなみに、ラズパイはOSも載せられますし高機能ですので、何も対策していない状態では当然ですがほぼ全てにチェックついてしまいますね。
Step 3: 対策(Mitigation)を確認する
チェックを終えると、上記のように右側に該当する脅威(TID)が表示されます。このTIDをクリックすると脅威の詳細を確認でき、その中にCWEやCVE、「対策(Mitigation)」がセットで記載されています。

おわりに
基板一枚レベルの小規模なシステムに対して、STRIDEやPASTA、アタックツリーなどの既存手法を用いると、どうしてもプロセスが重厚になりすぎたり、具体的な脅威をイメージしにくかったりと、どこか「ミスマッチ」な印象がありました。
しかし、MITRE EMB3Dの登場によって、組み込み特有の視点での分析が劇的にスムーズになったと感じます。
近年、サプライチェーンをはじめとするプロダクトセキュリティの重要性が叫ばれ、開発工程での脅威モデリングも強く推奨されています。とはいえ、「何から手をつければいいのか」と足踏みされている方も多いはずです。
そんな時こそ、まずはMITRE EMB3Dという「組み込み専用の地図」を広げることから始めてみてはいかがでしょうか。


